研究内容

  1. 新レーダーシステムならびに新観測ソフトウェアの開発

      超大型・高感度から小型・汎用に至る多様なレーダー送受信システム, 大気中の電波散乱機構, 実時間・高速信号処理方式, 高度な観測アルゴリズムならびにデータ解析手法に関する研究を行う.
    • MUレーダー」は, 当センターが開発した世界最高性能のVHF帯大型レーダーであり, 広い高度範囲を高い時間・高度分解能で観測できるが, 今なお新しい応用可能性を多く秘めている. 当研究室では, これを用いて特に地球大気圏の上下端に当たる 対流圏(高度1〜15km)ならびに電離圏(高度60〜1000km)の3次元的運動を 高分解能観測するとともに, 多ビーム・多チャンネル同時運用, 微細な乱流現象を超高分解能で観測する「干渉計観測」など, 新しい観測アルゴリズムを開発している.
    • 大気下端に存在する大気境界層(地上からたかだか数km程度)のみを 簡便かつ精密に観測するものとして, 小型可搬式の「境界層レーダー(BLR)」を開発した. 当研究室で設計・開発を行ったこのBLRは, %最近, 気象庁気象研究所, 関西電力総合技術研究所, 福島大学地球科学研究室などにも導入されている。 現在は車載型でさらに簡易に持ち運べる超小型レーダーも開発している。
    • MUレーダーを簡便化し、移動を可能にした 「可搬型VHF帯レーダー」(通称PASS)や、霧・雲の観測を行う 「ミリ波ドップラーレーダー 」の開発も行っている。 さらに次世代の大型レーダー送受信システム, 電波散乱機構, 実時間かつ高速の信号処理方式等の基礎研究を行っている他, 様々のタイプの新しいレーダーシステムの設計を試みている.
    • レーダーで得られるような多次元・多変数・大容量データの 処理においては, 従来のフーリエ解析を脱却して局在する波動の検出を可能とした 「 ウェーブレット解析」, 重畳するさまざまなスケールの現象の間に潜む普遍的相似性の 抽出を目的とした 「 フラクタル解析」など, 新しい理論的概念に基づく解析ソフトウェアの開発も, 並行して行っている.
  2. 多周波レーダー・飛翔体同時観測による大気環境の総合的モニタリング

      HF/VHF/UHF/SHF帯域にわたる多様なレーダーのほか, 衛星・ロケット・気球・航空機など飛翔体と組合せた観測・実験を行う.
    • 前述のMUレーダー・境界層レーダーに加え, やはり当センター所有の「ミリ波ドップラーレーダー 」・ 「C/Ku帯レーダー」, さらに気象庁や他研究機関の各種「気象レーダー」・ 「静止気象衛星」など 他の測定器とも組み合わせて, 太陽放射・人間活動・生物作用などが地球大気圏に与える グラウンド・フォーシング(対流・波動の励起や物質の供給) の解明を目指しているほか, 異常気象の正体と考えられている積雲対流の クラスタリゼーション(組織化)の メカニズムを解明しつつある. また、 「大気観測専用航空機」によるMUレーダー上空の同時観測を, 気象庁や他大学とも協力して実施しており、 平成10年度はさらに他研究所・他大学と協力してドップラーソーダー をMU観測所に搬入・設置し、境界層レーダーとの同時観測を実施した。
    • MUレーダーによる各種の高度な観測方法による結果と, 「 ラジオゾンデ」(小気球)・「大気球」・「航空機」などで 断片的ながら直接に得られるものとを総合し, 大気乱流の統計量や形状に関する情報を継続して蓄積している. これにより, 特に上方伝播波動のブレッキング(砕波)によって引き起こされた 多重乱流層が, 水・炭酸ガス・オゾンなど重要な微量物質の拡散輸送, ならびにエクマン・トランスポート(摩擦による子午面循環)など に与える影響を定量的に解明しつつある.
    • MUレーダーによる「マルチビーム観測」, 電離層観測設備「アイオノゾンデ」に加え, 米国と協同で新開発の「可搬型HF/VHF帯レーダー(FAR)」 を用いて, これまでに電離圏に生起する様々な擾乱を発見している. それらの発生機構を解明するため, 1996年夏には上記の各種レーダーの他, 国内外の研究所・大学から観測機器を九州地方に集結し, さらに「電離圏観測ロケット」2機を種子島から打ち上げる 「SEEK実験」の実施した。 これらの観測によって, 下方から超高層大気へのテレコネクション (波動伝播を通じた相互作用), 極地方のオーロラ領域から到来する「移動性擾乱(TID)」, 太陽系空間(磁気圏および太陽)の諸変動との相互作用の理解が進んだ。 それに伴い新たな疑問も生じ、 それらの理解を飛躍的に進展させるために、2002年度には 「電離圏観測ロケット」2機を鹿児島から打ち上げる 「SEEK2実験」を実施した。
  3. 異常大気現象と地球環境変動のダイナミクス

      電離圏異常現象, 集中豪雨・台風などに伴う異常気象現象などを観測し, また数値シミュレーションや理論的研究とも結合して, 地球環境変動の素過程を研究する.
    • 気象庁など現業観測機関への新しいレーダー観測技術の導入・応用を 積極的に推進するための努力を続けているほか, 津田研究室と協力して赤道域観測にも参画し, 地球環境監視レーダーネットワークの構築を目指している.
    • 当センターで発見した観測事実を, 内外の多くの研究者・観測機関と協同で理論的側面を含めて拡張し, 地球大気圏の背景擾乱としての大気波動・乱流のグローバル場, またこれに基く大気環境の数値モデリング・シミュレーション, さらに海洋・生物圏・地球内部あるいは太陽系空間とも関係付けた 惑星地球システムの基礎研究を段階を追って進めている.
    • 地球大気圏内部の各領域あるいは太陽や宇宙空間との間の 大気力学的・電磁力学的相互作用に関する研究を基礎として, 大気中の電波散乱機構の原理的解明あるいは 複合レーダーシステムの構築など, 地球のみならず太陽系各惑星大気圏の統一的解明を 推進するための21世紀のレーダーテクノロジーの 基礎研究を目指している.